ワンちゃんの認知症への対処法としては、自宅で飼い主さんでもできることがたくさんあります。
そして、認知症の症状を和らげる睡眠導入剤や鎮静薬も獣医師や動物病院で処方してもらうこともできます。
しかし、愛犬の症状は認知症だと
決めつけてしまうと重大な病気を見逃す可能性があるので
充分な注意が必要です。
ここでは、認知症でよく見る症状別の対処法を間違えやすい疾患とセットで説明していきます。
トイレを失敗する場合
犬が認知症になってしまった場合、トイレの失敗が目立つようになります。
これは、加齢による認知機能の視力、筋力の低下によって、トイレを見失う、たどりつけなくなることが主な原因として考えられます。
■飼い主さんができる対処法
- トイレを失敗しても叱らない!
- トイレの前兆があれば、トイレまで連れて行ってあげる
- トイレを生活場所に近いところに複数設置する
- 夜間はフットライトなどでトイレを見える位置に置いておく
- トイレと床の段差をなくす
- 踏ん張りが効く様にジョイントマットを敷く
- トイレ自体を広くする
- トイレを清潔に保つ
最も大切なことは、トイレを失敗しても叱らないようにすることです。叱ることで不安感が増し、ますます失敗をする様になり、何より信頼関係を失う原因となります。
認知症のワンちゃんには、トイレをしっかりと認知できるように、生活環境の近くに複数設置してあげると良いでしょう。
さらに、足腰の筋力低下や視力の低下が考えられるので、
・フットライトやバリアフリー化する
・ジョイントマットを敷いてあげる
・・・などの対策をしてあげることも飼い主さんができることの一つです。
トイレの失敗をした場合に認知症と間違えやすい疾患は以下の通りです。
■認知症と間違えやすい疾患
糖尿病や、クッシング症候群、腎不全などでは、おしっこの量が多くなりトイレの失敗が増えます。また、膀胱炎や前立腺肥大で頻尿がある場合もトイレの失敗は増えます。こういった疾患を見逃さない様にするためにも、認知症と決めつけずにまずは動物病院で診察を受けるようにしましょう!
日中によく眠り、夜間に目が覚めたり、夜鳴きする場合
犬の夜鳴きや昼夜逆転は飼い主さんを悩ませることが多い認知症の症状です。これは、高齢になるとメラトニンと呼ばれる睡眠ホルモンが減少することで眠りが浅くなるためと考えられています。
こうした場合、ワンちゃんができるだけ夜にぐっすりと寝れるような環境づくりをしてあげることが大切です。
■飼い主さんができる対処法
- 寝心地の良いベッドを用意する
- 夕食の時間を遅くしたり、夜食を与える
- 夜間静かな場所に寝床を設置する
- 夜間不安により飼い主さんを呼ぶ場合は、飼い主さんのそばに寝床を設置する
- 日中に一緒に遊ぶ時間を作る
- 散歩で外に連れていく
- ひとり遊びができるおもちゃを用意する
- 動物病院で睡眠導入剤や鎮静剤を処方してもらう
睡眠時には、適切な温度管理と柔らかい素材のベッドを使い心地よく深い眠りが取れる様に寝床の環境を整えましょう。
また、夜間空腹で目を覚ます場合には、食事の時間を遅くしてみたり、不安で鳴く場合には飼い主さんの近くに寝床を設置してあげましょう。日中にできるだけ活動させることも大切です。一緒に遊ぶ時間や散歩で外に連れて行ってあげたり、おもちゃなどを使って様々な刺激を与えるようにしましょう。
こうした刺激が認知症の予防にも繋がりますし、適度な疲労感を生み出し深い眠りを取れる様にもなります。
なかなか改善しない場合は、睡眠導入剤や鎮静剤を使うことも考えなければなりません。
これらの薬は、うまく効いてくれると昼夜逆転を改善してくれますが、認知症をさらに悪化させたり寝たきりになってしまうリスクもあるので最終手段として考えておきましょう。
夜間に夜鳴きしたり、昼夜逆転する場合に認知症と間違えやすい疾患は以下の通りです。
■認知症と間違いやすい疾患
- 甲状腺機能低下症
- 多飲多尿を示す病気(糖尿病、クッシング症候群、腎不全など)
甲状腺機能低下症では、体の代謝が落ち、体温の低下が症状として現れてきます。そうした体温の低下は、夜間、寒さにより起きてしまう浅い眠りにつながります。
また多飲多尿を示す病気では、尿意を催し、夜中に目を覚ますこともありえます。こうした疾患も認知症と間違えないように注意しましょう!
障害物を避けることができない、徘徊する
障害物を避けることができなかったり、立ち往生、徘徊したりする場合も犬の認知症ではよく認められる症状です。
この様な症状は、認知機能の低下により、自分が今どこにいるか、何をしているのかを把握できないことにより起こると言われています。
■飼い主さんができる対処法
- 円形のサークルに入れてあげる
- 部屋の家具の配置を大きく変える模様替えは控える
- 部屋や柱の角に入り込みやすいため、クッションを配置して怪我をさせないようにする
前には進むことができるが、後戻りができなくなるといった症状は犬の認知症では特徴的です。
よく部屋の角などで、立ち往生すると不安感から吠えることも多いです。
こういった場合には、円形のサークルなどに入れてあげて立ち往生しないような環境を作ってあげることが大切です。
障害物を避けることができなかったり、徘徊する場合に認知症と間違えやすい疾患は以下の通りです。
■認知症と間違えやすい疾患
- 脳疾患
- 前庭疾患
- 加齢による視力の衰えや失明
脳炎や脳腫瘍などの脳疾患でも認知症と同じような症状が認められます。また、前庭疾患や視力の衰えにより目的もなく徘徊したり、円を描くように徘徊することもあります。
こうした疾患と間違えないためにも一度動物病院を受診することをおすすめします。
急に攻撃的になる場合
愛犬が認知症で攻撃的な性格に変わってしまうこともよく問題として挙げられます。これは、認知機能や視覚、聴覚の低下による不安感の高まりが原因と考えられます。
■飼い主さんができる対処法
- こまめに声をかけてあげて不安感をとってあげる
- いきなり触れたり、びっくりさせることをしない
- 嗅覚を使った遊びなどでストレスを解消してあげる
愛犬が認知症になっている時には、不安感やストレスを感じやすく、イライラしたり攻撃性が増したりすることもあります。
そのような時はこまめに声をかけてあげてたり、いきなり触れないようにして、不安感をとってあげることを大切にしましょう。
また、犬は視覚や聴覚が衰えても嗅覚は衰えにくいことが知られています。
コングにおやつを詰めて遊ばせてみたり、おやつをあげながらスキンシップをとるようにして嗅覚に刺激を与えつつストレスを解消させます。
急に攻撃的になる場合に考えなければいけない疾患は以下の通りです。
■認知症と間違えやすい疾患
- 脳疾患
- 甲状腺機能低下症
脳炎や脳腫瘍の発生する部位によっては攻撃性が増したり性格の変化がみられる可能性があります。
また、高齢犬に多い内分泌疾患である甲状腺機能低下症においても攻撃行動の増加がみられることがあると言われています。
認知症と決めつける前に、病気の疑いがある場合は動物病院を受診する様にします。
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