【ドッグフード】肝・胆・膵の疾患

ドッグフード・犬の病気【肝・胆・膵の疾患】急性膵炎

膵臓(すいぞう)は、胃と十二指腸に接しているV字型をした臓器で、膵液やホルモンの分泌が主な働きです。

膵液は、トリプシンやキモトリプシン、リパーゼ、アミラーゼなどの消化酵素を含み、膵管を通して十二指腸に送られ、食物の消化を促します。

膵臓が分泌しているホルモンは、血糖値の調整(インスリン、グルカゴン)や消化機能を抑制(ソマトスタチン)などの役割を担っています。

ここでは「急性膵炎」の説明をします。

概要

急性膵炎とは、膵臓に急激な炎症が起こり、嘔吐や腹部痛などの消化器症状が生じる病気です。膵臓では食べ物の消化を助ける膵液という消化液を作っています。急性膵炎になると、何かしらの原因で一部分の膵臓で膵液をうまく出すことができず、膵臓内に膵液が溜まってしまい、膵臓内で炎症が起き始めます。

軽度な膵炎は自然に治癒することも多いですが、重症化した場合は最終的に膵臓全体に炎症が広がり、膵液が膵臓をも消化(自己消化)してしまいます。ほかの臓器にも炎症が波及し、多臓器不全や血液の凝固異常を起こして命に関わる場合もあります。

ここ最近は、膵炎のマーカー(TLI、cPL)により80%近くの犬の急性膵炎を血液検査で発見できます。急性膵炎の症状がある場合は、早めに発見し、重症化する前に治療してあげると良いでしょう。

症状

9割近い犬で食欲不振と嘔吐が始まります。膵臓は胃のやや右下(右上腹部)にあるので、その位置に痛みが出て、お腹を触るとキャンと痛がったり、前足を前方に伸ばして胸を床につけ、お尻を突き上げた「お祈り姿勢」をとる犬が多いです。

黒色や血が混じった下痢が起こる場合もあります。

重症化し、多臓器不全、血液の凝固異常などを起こすと、黄疸、発熱、止血異常、速い脈や呼吸などが認められるようになり、命に関わる状態になります。

犬が急性膵炎を発症すると、膵臓の本来の機能に異常を来し、次のような症状を引き起こします。

  • 嘔吐(おうと)
  • 下痢
  • 腹痛
  • 食欲不振
  • 元気消失
  • 脱水

こんな症状が見られたらすぐに動物病院を受診

次のような様子が犬に見られる場合、急性膵炎が悪化している可能性があります。

  • 激しい腹痛(胸を床につけ、お尻を持ち上げる「お祈りのポーズ」をする場合が多い)
  • ぐったりして何も食べない
  • 血色が悪い
  • 皮膚に点状内出血を起こしている
    急性膵炎により播種性血管内凝固(DIC)と呼ばれる状態に陥ると、血小板が不足して内出血を起こしやすくなります。

急性膵炎が重症化すると、命にかかわるおそれがありますので、様子を見ずにすぐに動物病院を受診します。

犬の急性膵炎の原因

急性膵炎は、膵臓が自己消化(膵臓から分泌される消化酵素により、膵臓自身が消化されてしまう現象)して引き起こされると考えられています。通常、膵臓には自己消化を防ぐ機能が備わっていますが、何らかの原因で防御機能が破綻すると自己消化と炎症が生じます。

急性膵炎を引き起こす可能性のある病気

愛犬が次のような病気を発症していると、急性膵炎を引き起こす可能性があります。

ホルモンを作り出す器官のいずれかに不具合が起こる内分泌疾患は、急性膵炎のリスク要因です。

急性膵炎にかかりやすい犬の特徴は?

次のような特徴をもつ犬は、急性膵炎にかかりやすい傾向にあります。

発症リスクが高い犬種

好発犬種はミニチュア・シュナウザー、ヨークシャー・テリアなどのテリア系犬種、

アメリカン・コッカー・スパニエル、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、ボクサー、コリー系犬種です。

肥満犬は好発要因です。また脂質代謝異常の犬や高脂肪食の摂取、胆のう疾患、クッシング症候群糖尿病、甲状腺機能低下症、高カルシウム血症を持病で持っている犬は、急性膵炎の発生率が高まります。

年齢層

中年齢から高年齢の犬

食生活

過食や高脂肪食などを続けている犬や肥満の犬

薬剤の投与歴

臭化カリウム、フェノバルビタール、アザチオプリン、L-アスパラギナーゼなどの投与をしたことがある犬

予防、治療

予防として、肥満や高脂肪なおやつやフードを避け、バランスの良い食生活を心がけるようにしましょう。膵炎にかかりやすい持病がある犬は、そちらのコントロールが急性膵炎の予防になります。

治療は急性膵炎用抗炎症剤の投与や対症療法がメインになります。症状に応じて輸液療法や投薬治療、食事療法、鎮痛管理が行われます。輸液療法を行うことで、脱水を改善させ、血液の流れを良くして血液凝固異常を防ぎます。膵臓の血流も良くなり、膵臓の炎症物質を取り除きやすくなります。

投薬治療は、急性膵炎用抗炎症剤をメインに使用し、吐き気止めや消炎剤、蛋白分解酵素阻害薬やヘパリンが使われる場合があります。

食事療法は膵臓を刺激しない管理を心がけます。低脂肪食を与えたり、犬の状態によっては数日間の絶食を行います。

鎮痛管理は、犬が痛みの症状を訴えなくても実際には痛みがある場合が多いので、しっかり行いましょう。痛みを取る鎮痛剤を投与します。

急性膵炎は症状を見逃さず、早めの治療をすれば回復する可能性の高い病気です。
重症化する前に早めに専門家に相談しましょう。


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