動物の目はとてもデリケートなため、
目が少しだけ赤い・・・など
ほんの少しの変化だけでも病気の可能性が疑われます。
・目が充血している・目ヤニがでる
・左右の瞳の大きさが違う
・目が白く濁っている
・涙が多くなった
・目をきにしている
・物音をこわがるようになった
・歩いていてモノによくぶつかる
・目が大きくなった
などこれらの症状にひとつでもあてはまるなら
目の病気が疑われます。
ペットの目の病気は遺伝性が強いものも多く、種類によりかかりやすい病気があるため注意が必要です。病気の種類によっては最悪の場合、失明することもあります。
何か異常を感じた際は、早めの診察が必要となる場合があります。
ここでは「犬の原発性水晶体脱臼」について説明をします。ご参考になれば幸いです。
概要
原発性水晶体脱臼とは、先天的、遺伝的な原因で眼球のレンズにあたる部分(水晶体)が正常な位置から外れてしまう病気です。
原因としては、主にレンズを固定する線維(毛様小帯)が遺伝的に弱いことで脱臼が起こります。両眼で起こる場合が多いです。また、そのほかの病気から毛様小帯に負荷がかかり発症する水晶体脱臼のことを、原発性とは区別し「続発性」水晶体脱臼と呼びます。
眼球は、全体が強膜(白目の部分)という白い強靭な膜で包まれています。光を取り込む部分の表面に、円形の透明な角膜があり、角膜の奥に光の量を調整する虹彩(茶目の部分)があります。角膜〜虹彩にかけての部分は前房水という水で満たされています。虹彩のすぐ裏には水晶体という無色透明なレンズがあり、光の屈折を調整する働きがあります。レンズはズレないように毛様小帯という線維で固定されています。さらに水晶体は、眼の後方に落ちないように、眼底の大部分を占める無色透明な硝子体というゼリー状のざぶとんに乗っかっています。そしてその硝子体の奥に網膜があり、光や映像を感じ取って視神経に伝えます。
眼球はカメラの構造に似ています。丸いカメラ=眼球とすると、強膜(ボディ)、角膜(フィルター)、虹彩(しぼり)、水晶体(レンズ)、硝子体(暗箱)、網膜(フィルム)といったイメージです。
水晶体脱臼はカメラで言えば「レンズが外れてしまった」ということです。水晶体(レンズ)の脱臼は、前(前房内)に脱臼する場合(前方脱臼)、後ろ(硝子体内)に脱臼する場合があり、脱臼の程度で完全脱臼、亜脱臼があります。水晶体の脱臼のみでは視力障害以外の症状がなく、飼い主は気がつかない場合も多いです。
しかし、ブドウ膜炎や緑内障を合併する場合が多く、このような状態になるとさまざまな症状が出始めるので注意が必要です。
症状
水晶体脱臼のみが確認され、無症状な場合もあります。症状は後方脱臼より前方脱臼で強く出る傾向があり、角膜の炎症やむくみによって白目が赤くなったり(結膜炎)、角膜の透明度が落ちて白く曇った感じに見えたり(角膜浮腫)します。
眼に光を当ててよく覗いてみると、脱臼した水晶体が虹彩の前方または後方に「眼球が動くたびにブルブルと揺れながら」存在するのがわかると思います。
脱臼した水晶体は白内障になりやすく、白く濁ったレンズが眼球の中に確認できる場合もあります。
ブドウ膜炎や緑内障を合併すると危険です。
眼圧が上昇し、白目の血管が太く蛇行し、眼球が急に大きく腫れます。犬も眼の痛みから嘔吐、食欲低下などを起こしやすく、重症化すると短期間で失明します。
対象
好発犬種はテリア種全般です。
・ワイアー・フォックス・テリア、
・チベタン・テリア、
・ケアン・テリア
・・・に最も多くみられ、
・ボストン・テリア、
・プードル、
・ボーダー・コリー
・・・などでも確認されます。
両眼に発症する場合が多く、若い成犬(2〜5歳齢)に発症しやすいです。
予防、治療
遺伝的な疾患なので、残念ながら予防法はありません。好発する犬は定期的に眼の検査を行い、発症した場合は、合併症を防ぐために早めに治療を開始します。
治療は、内科療法と外科療法があります。
どちらも水晶体を正常な位置に戻すための治療ではなく、合併症を防ぐ治療です。
内科療法としては、瞳孔を縮める作用のある目薬を使用して水晶体の前方脱臼を防ぐ治療が行われます。合併症で緑内障やブドウ膜炎などがある場合は、そちらの治療が同時に行われます。
外科療法としては、全身麻酔下で、水晶体を摘出する手術が行われます。水晶体の前方脱臼は、高い確率で緑内障を合併して発症します。
犬の体力、手術の費用などが許容範囲であれば、手術を検討すると良いでしょう。
後方脱臼や亜脱臼の犬に対して内科療法、外科療法のどちらを選択するかは、犬の状態をふまえ専門家とよく相談をして決定しましょう。
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