緑内障とは、眼圧が上昇することが原因で発症する病気を指します。
緑内障は、眼圧が上昇することが原因で発症する病気をさします。
人の場合でも40歳代のうち20人に1人が緑内障であるといわれる位、よく発症する病気です。
人と同様に、緑内障は犬でもみられる病気であり、
進行すると視覚機能を喪失してしまいます。
また原因にもよりますが急速に進行するすることもあります。
ここでは、「犬の緑内障」について説明をします。
犬の緑内障ってどんな病気?
犬の目の中では、毛様体(もうようたい)と呼ばれる組織から、眼房水という水のような透明な液体が作られています。この眼房水は作られた量と同じ分だけ、隅角(ぐうかく)という場所から排出されているため、目の中の眼房水は常に一定量に保たれています。
しかし、何らかの理由で眼房水がうまく排出されなくなってしまうと、眼房水がどんどん目の中にたまっていき、目の中の圧力である眼圧が上がって視覚が障害されてしまいます。この状態が「緑内障」です。
眼圧がそれほど高くなければ、ほとんど症状はありませんが、眼圧が急激に高くなると目の表面が白く濁ったり(角膜浮腫)、目が大きくなったり(牛眼)、瞳孔が開いてしまったり(散瞳)、白目の部分が充血してしまったりします。
さらに、目の神経が障害されて視覚を失ってしまうと、ちょっとした段差でもつまずいてしまったり、物によくぶつかるようになったり、目が見えない恐怖から飼い主さんが愛犬を触ろうと伸ばした手を噛んでしまったりすることもあります。
また、痛みを伴う場合は目をまぶしそうにしたり(羞明)、涙が増えたり、元気や食欲が無くなったりといった症状も見られます。
視覚が残っていて、かつ視覚の回復や維持が期待できる場合には、点滴をしたり手術をしたりすることによって眼圧を下げます。しかし、すでに失明している場合は、視覚の回復が難しく痛みを伴うことが多いため、痛みを取ってQOL(quality of life:生活の質)を向上させるために眼球を摘出する手術を行うこともあります。
どうして症状が出るの?原因は?
犬の緑内障は原因によって大きく3つに分けることができます。
先天性緑内障
先天性緑内障は、生まれつきの隅角の異常が原因で発症しますが、犬ではあまり見られません。
原発性緑内障
原発性とは、原因不明を表します。原発性緑内障は、緑内障を引き起こすような目の病気がないにもかかわらず、隅角の異常から眼圧が上がることで発症します。詳しい原因は不明ではあるものの、一部の犬種で発生しやすいことがわかっています。
続発性緑内障
続発性とは、ほかの病気によって引き起こされた疾患です。続発性緑内障は、ぶどう膜炎や網膜剥離、白内障、腫瘍といった目の病気によって隅角が塞がれてしまい、眼圧が上がることで発症します。
どんな犬が緑内障にかかりやすいの?
原発性緑内障の発生には遺伝が関係していると考えられていて、好発犬種(原発緑内障にかかりやすい犬種)として次のようなものが挙げられます。中でも特に柴犬に多く見られます。
また、原発性緑内障は4歳くらいで発症することもありますが、6~7歳くらいの年齢で発症しやすいことがわかっています。
犬の緑内障の症状とチェック項目
自宅で眼圧を測定することができればよいのですが、専用の器具や技術が必要なため、あまり現実的ではありません。
そのため、家庭では日ごろから下記のような症状がないかを愛犬の目や行動をよく観察して確認しましょう。もし、ひとつでも当てはまる症状があれば、緑内障にかかっている可能性があるため、すぐに獣医師に相談するようにしてください。
- 目が大きくなっている
- 目の表面が白っぽく見える
- 白目の部分が充血している
- 物によくぶつかるようになった
- 明るい場所でも瞳孔が開いている
- 目をまぶしそうにしぱしぱさせている
- 涙が増えた
- 寝ている時間が増えた
- 触ろうとすると嫌がるようになった
犬の緑内障はどうやって診断されるの?
犬の緑内障と診断するために、病院ではまず飼い主さんに問診を行い、いつからどんな症状が現れたのかを確認します。
次に、犬の目の状態を目視で観察する視診を行い、さらに、まぶたの上から眼球を手で覆うように触る触診を行うことで目の張り具合を確かめます。そして、専用の機械で眼圧を測って高眼圧であることを確認し、緑内障だと診断します。
視診をした後にある程度、緑内障だと目星がついている場合は、症状の程度やほかの目の病気がないかどうかを確認します。具体的には、網膜や視神経の状態を観察する眼底検査や隅角の異常を確認する隅角検査です。
これらのほか、角膜が白濁している場合、網膜や水晶体の状態、腫瘍がないかなどを確認するため、目の超音波検査、視覚の有無を確認する綿球落下試験なども同時に検査することがあります。
犬の緑内障の治療にはどんな方法があるの?
犬の緑内障の治療方法には、「内科的治療」と「外科的治療」があります。
緑内障の治療方針は、視覚が残っているかどうかによって大きく異なります。視覚が残っている場合には、視覚を維持するため、目薬や点滴、目に針を直接刺して眼房水を抜く前房穿刺などで、すぐに眼圧を下げます。これらの治療で眼圧がコントロールできるようになったら、これ以上症状が進行しないように、内科的治療や外科的治療を引き続き行います。
内科的治療
内科的治療では、目薬や飲み薬、注射、点滴などを使って眼圧を下げます。
外科的治療
外科的治療は、レーザーを使って眼房水が作られる量を減らす手術(毛様体レーザー光凝固術)や、インプラントという専用の器具を眼球に取り付けて、余分な眼房水を排出する手術(前房シャント術)などによって眼圧を下げます。また、ほかの目の病気がある場合にはその手術を同時に行うこともあります。
すでに視覚が失われている場合や、視覚が残っているが痛みが強く回復や維持が難しい場合には、痛みをとってQOLを向上させるため、眼球摘出や義眼挿入などの手術を行います。
外科的治療は専門の器具や高度な技術が必要になるため、眼科専門の動物病院や大学病院など一部の動物病院でしか手術をすることができません。そのため、外科的治療を希望する場合は、まずはかかりつけの動物病院に相談してみましょう。
犬の緑内障は治せるの?
犬の緑内障は、残念ながら現代の獣医療では完治することが難しく、治療を続けていたとしてもいつかは失明してしまいます。
しかし、たとえ犬が視覚を失ったとしても、記憶や嗅覚、聴覚などを使うことで今までとあまり変わりなく過ごすことができます。
そのため、治療で症状をコントロールするのはもちろん、家具の配置や散歩コースなど、犬の目が見えているときに過ごしていた環境を変えない、おもちゃを音の出るものに変えるなどの工夫をしてあげると、愛犬がより快適に過ごすことができます。
どうやって予防したらいいの?
私たち人間の緑内障は、加齢や喫煙、高血圧などにも原因があるとされているため、ストレスをかけない生活や生活習慣の見直しが予防につながると言われています。
一方、犬の緑内障には、まだ明確な予防方法はありませんが、片目だけ発症している場合は、症状が現れる前にもう片方の目に対して予防的に治療をすることがあります。
そのため、愛犬が緑内障になってしまったら、いち早く動物病院を受診し、すぐに治療を始めることが大切です。日ごろから愛犬の目をよく観察する習慣をつけ、早期発見・早期治療に努めるようにしましょう。
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