犬の混合ワクチンは、感染症から愛犬を守るために非常に大切な手段です。
しかし、さまざまな情報が飛び交っているため、どの種類をいつ打てばいいのかよくわからない飼い主さんも多いのではないでしょうか。
ここでは、「犬の混合ワクチン接種によって予防できる感染症や接種時期、副反応」等について判りやすくまとめてみました。ぜひ愛犬のケアに役立ててください。
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犬に混合ワクチンが必要な理由
細菌、ウイルス、寄生虫などの異物から体を守る抵抗力のことを「免疫」といいます。この免疫の仕組みを利用したのが「ワクチン」です。
ワクチンとは、弱らせたり殺菌したりした病原体(ウイルス、細菌)を接種することによって、それに対する抵抗力(免疫)を獲得させ、病気の発症を予防したり、重症化を防いだりするものを言います。
犬においても、さまざまな病原体が日常的に存在し、中には命に関わる重大な病気もあります。
特に子犬や高齢の犬は抵抗力が弱く、感染によって命のリスクが高くなるためワクチンの接種が重要になります。
また、外に出て犬と接触するなどでも感染によるリスクが高くなるため、ワクチンを接種する必要があります。
トリミングやドッグラン、ペットホテルでは、ワクチン証明書の提出を義務付けているところがほとんどです。
犬から人に感染する可能性がある「人獣共通感染症」を予防する公衆衛生上の観点においても、ワクチンを接種することは大切です。
混合ワクチンで予防できる感染症
ワクチンには、「コアワクチン」と「ノンコアワクチン」があります。コアワクチンは、ワクチンの対象となる動物はすべて接種すべきワクチンです。
コアワクチンに含まれる病原体は、全世界に見られ、感染すると命に関わることがあります。
◆犬では、 ・犬ジステンパーウイルス感染症、 ・犬パルボウイルス感染症、 ・犬伝染性肝炎、 ・犬アデノウイルス2型感染症、 ・・・があります。
ノンコアワクチンは、感染のリスクがある個体のみ接種することが勧められるワクチンです。犬では、犬パラインフルエンザウイルス感染症、犬コロナウイルス感染症、レプトスピラ感染症があります。
ジステンパー
原 因 ジステンパーウイルスによって感染し、うつりやすく死亡率も高い、犬の代表的な病気です。
感染経路 空気感染と感染した病犬から直接うつる場合があります。
症 状 子犬での発生が最も多く、感染すると発熱や食欲消失、膿性の鼻汁、目ヤニといった初期の症状から、呼吸器系、消化器系に広がり、激しい咳や下痢、脱水などの症状が現れ、てんかん様発作、後躯麻痺等の神経症状を示し、衰弱死してしまいます。
犬コロナウイルス病
原 因 犬コロナウイルスによる伝染病です。
感染経路 このウイルスは感染犬の便や尿に放出され、経口感染します。
症 状 子犬の場合は、嘔吐と中~重度の水様性下痢を引き起こします。潜伏期は1~2日で、軽い胃腸炎の症状の後、多くは回復します。
レプトスピラ症
原 因 レプトスピラ症は、犬だけでなく他の動物や人にも感染の可能性のある伝染病で、細長いらせん状の細菌であるスピロヘータによって起こります。
感染経路 病原菌は尿中に排泄され、病犬の尿と接触することにより感染。ネズミの尿も感染源になります。
症 状 レプトスピラ症には3タイプあり、黄疸出血型では、黄疸の他に嘔吐、下痢、歯茎からの出血、血便などがみられます。 カニコーラ型は、嘔吐、下痢による脱水症状、体温の低下などがあり、手当てが遅れると尿毒症を起こし死に至ります。 ヘブドマディス型は、腎炎と肝炎を併発することもあり死亡率の高い病気。最近はヘブドマディス型を予防できるワクチンも用意されています。
アデノウイルス1型
原 因 アデノウイルス1型による感染症です。ウイルスが、単独/複合感染することで起こります。
感染経路 感染犬の唾液や便、尿などから感染。
症 状 子犬の突然死(感染して一晩で死亡する場合があります)や、発熱、元気消失、食欲消失、嘔吐、下痢、扁桃腺の腫れ、目(角膜)の白濁といった犬伝染性肝炎の症状を起こします。
アデノウイルス2型
原 因 アデノウイルス2型による感染症です。ウイルスが、単独/複合感染することで起こります。
感染経路 感染犬との接触、咳やクシャミなどの飛沫から感染します。
症 状 肺炎や扁桃炎など呼吸器病を引き起こします。現在2型のワクチンで1型の犬伝染性肝炎も予防できることから、2型ウイルスによるワクチンが主に用いられています。
パルボウイルス感染症
原 因 パルボ(極小という意味)ウイルスによる急性伝染病で、1979年にアメリカで発見され、その後世界中に広まりました。 犬パルボウイルスはチリやほこりに混じって長期間生存する、たいへん抵抗性の強いウイルスです。
感染経路 感染犬の嘔吐物や便などから感染します。
症 状 母犬譲りの免疫のない子犬が突然死してしまう心筋型と、激しい下痢や嘔吐を特徴とする腸炎型があります。子犬の場合は、とくに症状が重く死亡率も高いので、注意が必要です。
犬パラインフルエンザ
原 因 犬パラインフルエンザウイルスは、単独での感染症よりも犬アデノウイルス2型、犬アデノウイルス1型、ボルデテラ、マイコプラズマなどいろいろなウイルスや細菌と混合感染して、 気管支炎や肺炎、または一般に「ケンネルコフ」と呼ばれる呼吸器系疾患を起こすものとして知られています。
感染経路 伝染力が非常に強く、病犬との接触や、咳やクシャミなどから空気感染を起こすこともあります。
症 状 気管、気管支、肺に炎症を起こし、激しい咳が特徴です。
関連記事:犬のケンネルコフの症状と原因ってなに?治療法はどうするの?
混合ワクチンで予防できる感染症一覧
1種 | 2種 | 2種 | 4種 | 5種 | 6種 | 7種 | 8種 | 10種 | |
犬ジステンパーウイルス | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||
犬伝染性肝炎 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
犬アデノウイルス2型 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
犬パルボウイルス | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||
犬パラインフルエンザウイルス | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
犬コロナウイルス | ○ | ○ | ○ | ||||||
レプトスピラ | 2種 | 4種 | 2種 | 2種 | 4種 | ||||
※レプトスピラは血清型が何種類入っているかを表記しています 。
混合ワクチンは、入っているウイルスや菌の種類によって2種~10種まであります。
月齢や住んでいる地域、生活環境によって適切なワクチンは異なりますので、病院で相談してどのワクチンを打つか決めるといいでしょう。
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